修了生インタビュー

 

丸山 大地さん
専門研修修了/勤務医
福岡大学医学部小児科 助手
HCFM在籍期間/2016〜20年(専門研修 4年間)
福岡県久留米市出身。2014年福岡大学医学部医学科卒業後、宗像水光総合病院にて臨床研修。16年より北海道家庭医療学センターにて専門研修、20年3月修了。家庭医療専門医・指導医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、日本救急医学会推薦インフェクションコントロールドクター、日本旅行医学会認定医、日本サッカー協会推薦スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医、子どもの心相談医、産業医。
地域医療の最前線で学ぶ。
日本の医療は今、大きな転換期を迎えています。そうした中、課題先進地の北海道で現場の先生たちがどう戦っているのかを学んでみたくて、研修先は北海道を選びました。
北海道に来て、一生懸命地域医療に取り組んでいる先生たちを目の当たりにして、シンプルにかっこいいなと思ったのが最初の印象です。どの先生も患者さんに対してやさしく、誠実に向き合っていることに感銘を受けました。
教育という意味ではかなり手厚いです。手厚すぎて、最初は戸惑うかもしれません。
北海道家庭医療学センターの指導医の先生たちは、医学教育の知識、技術に長けているとともに、ご自身が持っている知識と技術を、いかに若い医師にデリバリーするかということにすごく熱心です。僕自身は、診療技術はもちろんですが、真の家庭医としてのマインドを学ばせてもらったことが大きな財産になりました。
北海道家庭医療学センターの先生たちが大事にしている考え方の一つが、患者中心の医療です。患者さんにとって健康とはなんなのか。疾患が治ることでしょうか? 寿命が長くなることでしょうか? 私達は一度立ち止まる必要があるかもしれません。病気を抱えている人たちが何に苦しみ、どんな解決を望んでいるのか。その人の背景までセットで考える必要があるということを、日々の診療や振り返りを通して学びました。
そういう意味でも、指導医の先生にはもちろん、北海道の患者さんに「診療を通じて人として育ててもらった」という感覚があります。
「ゆりかご」から診られる医師に。
現在は地元の福岡県に戻り、福岡大学筑紫病院の小児科で勤務しています。また、まどかファミリークリニックで2週間に一度、子どもたちの訪問診療を担当しています。
日本では現状、家庭医の主戦場はどうしても成人がメインで、子どもたちは小児科にかかるのが一般的です。僕自身、本当の意味で「ゆりかごから墓場まで」診る力をつけるために、小児教育をもう少し深めたいと考えて小児科に入りました。
マインドは家庭医のまま。むしろ、その価値観を小児科のフィールドでうまく適用できるのではないかと考え、毎日の診療に当たっています。たとえば小児の患者さんを診ながらお母さんの悩みにも応えることができるのは、やはり家庭医のトレーニングを受けてきたからだと思うんです。
社会との関わりにおいても家庭医の学びが生きていると感じます。
以前、ダウン症候群のお子さんを診たときに、お母さんが「うちの子は健康じゃないから」という話をされていました。では、この子にとって「健康とはなんだろう? それはやはり、周囲が彼ら・彼女らを認めてあげることだったり、本人が幸せに生活できることだ」と考えました。
それで行政に働きかけて、「ダウン症候群とはどういうことなのか」を周りのお母さんたちに知ってもらえるような学びの機会を設けました。こうした、本人にダイレクトにアプローチするだけではない、社会的な処方の重要性も、北海道で学んだことの一つでした。
家庭医のマインドを、すべての医師に。
家庭医は臨床だけではなく、教育、研究、経営の4本柱が大事だと、北海道家庭医療学センターの先生は常々おっしゃっていました。僕自身、臨床ではこの2年余りの間、子どもたちを診る中でかなり幅が広がったと実感しています。研究という面では現在、ハーバード大学のプログラムに参加して、世界中の医師とともに臨床研究を学んでいます。
教育と経営に関してはこれからですが、特に教育については福岡県内でも北海道家庭医療学センターのような「研究・教育を高いレベルで実践する組織」ができればいいなと思っていて、教育体制づくりは僕のこれからの大きなテーマになろうかと思います。
僕は、北海道家庭医療学センターの卒業生だからなおさら思うのかもしれませんが、家庭医のマインド、ジェネラリストのマインドを、すべての医者が持つべきだと考えています。そうでなければ、日本全体で抱える課題を解決することはできません。
医大生、臨床研修中の皆さんの中には、医療を通して人を幸せにしたいという熱い思いを持って医師の道を選んだ方も多いでしょう。人を幸せにすることがいかに難しく、いかに尊いことか、医者という素晴らしい仕事を通じて学んでほしいと思います。私はそこに人生をかける価値があると信じて北海道家庭医療学センターの門をたたきました。
良い医者とは何なのか。その明確な答えを探すため、僕と伴走してくれた北海道家庭医療学センターの指導医、仲間、スタッフの皆様に本当に感謝しています。
最後に、この場所で、日本のプライマリー・ケアの最前線に触れることを強くおすすめします。
※勤務先・学年は全て取材当時のものです(2022年)
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