COVID-19と家庭医

杉原 伸明

若草ファミリークリニック 専攻医(4年目)



「学びの場を広げたい」

新型コロナウイルスの感染拡大がテレビで報じられるようになって以降、定期外来ではこの話題がほとんどです。人によっては散歩に出なくなったり、逆に風邪症状があるのに無理に会社へ行ったりと、感染予防の考え方にかなり差があるようです。漠然とした不安で今まで通りの生活が難しくなる方もいるため、テレビのコメンテーターに振り回されないよう、コロナという大きな困りごとに対して具体的にどう生活を変容させるのが妥当なのか、患者さんに最も近い医師としてわかりやすく説明し、不安を解消することをここ数カ月はとにかく意識していました。

一方で自身の学びに関しては、HCFMの特色の一つであるオンサイト研修会、つまり日頃各地の診療所・病院に勤務する専攻医が顔を合わせるイベントが軒並み中止となってしまいました。そうしたこともあり、専攻医のなかでは自分たち自身で主体的に学ぶ場を構築しようという動きが出ています。私個人としても、たまたま4年前から多施設合同での臨床推論の勉強会を自主的に開催していたのですが、学生さんからぜひwebでの良い会を提供してほしいとの声もあり、その流れで5月にweb会議システムを活用した勉強会をHCFMの指導医と協力しながら全国の医学生向けに実施したところ、予想を大幅に超える反響がありました。勉強会の内容はweb上でのディスカッションを通して「臨床推論」という総合診療の基礎ともいえる思考過程のトレーニングを体験するものです。参加者の多くは、総合診療に興味があるものの大学では実習が行われず、かといって興味のある病院への見学もできず、各地の勉強会も中止となり、主体的に学ぶ場の多くを失った学生たちでした。各大学の熱心な層が今回集まってくれ、イベント中に連絡先を交換し合う学生もいたため、こういった勉強会自体が人をつなぐハブのような機能を果たすことも分かりました。インターネットでの勉強会は場所を選ばないので、すごくポテンシャルがあると感じています。ブラッシュアップを重ねながら、これからも続けていきたいと考えています。

※医学生・初期研修医を対象とした「HCFM臨床医学勉強会」の開催情報は北海道家庭医療学センターのFacebookページでご案内しています

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