COVID-19と家庭医

山田 康介

更別村国民健康保険診療所 所長



「地域を診る視点で」

クルーズ船で集団感染が発生したのは2月頭だったでしょうか。私たちはこれに先立ち1月末から診療所内で安全に診療するための対策を進め、2月後半には患者さんから電話相談があった場合のトリアージのフローを職員内で共有していました。その頃、札幌で感染者が増え始め、その波が十勝に来るのは時間の問題だろうなんて診療所内で話をしていたのを覚えています。2月22日に、とあるお子さんがうちを受診しました。24日に再診して、熱も下がらず新型コロナウイルス感染症を疑う病歴も認められたので、念のため保健所に相談したところ、その後の検査で陽性であることが分かりました。「まさか自分たちが十勝第一号の患者さんを診ることになるとは」という驚きもありましたが、いつ来ても大丈夫なように準備を整え、感染防御を徹底して行った上で診察をしたので、職員は一人も感染しませんでした。

その後すぐに地域内での感染拡大に備え、あらかじめ準備していた「発熱外来」を立ち上げました(その様子はブログ「どんぐり村の診療所」http://sarabetsuvillage-clinic.blogspot.com/で紹介しています)。同時に防災無線や町内会ネットワークなど、地域のメディアを駆使して、住民へ感染予防のための生活上の注意点を訴え続けました。それからは症状を訴える人もなく、幸いクラスターにならず収束できたのは、診療所内の備えと住民への周知が功を奏したのかもしれません。普段診療所を受診しない人も含めて感染予防対策を広く地域全体に行き渡らせることができた、これは自慢でもなんでもなく、更別村で20年間コツコツと信頼を築きあげながら情報をきちんと届ける仕組みを築いてきたと考えています。

この数カ月間というのは、研修中の専攻医の皆さんにとって、「地域を診る視点」を実践を通して学ぶ、まさに教育的な経験になったのではないかと思います。

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