インタビュー

安達ひろむ

北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科
専攻医3年目

聖マリアンナ医科大学医学部 卒業
北海道大学病院 初期研修
北海道家庭医療学センター 後期研修
・国民健康保険上川医療センター 医師
・更別村国民健康保険診療所 医師
・北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科 医師

出産を経て、職場に復帰。

家庭医を志したのは初期研修2年目の秋です。ほかの先生に比べるとかなり遅い方ですね。じつは初期研修を始めるタイミングで結婚し、主人は北海道家庭医療学センターの後期研修プログラムに進みました。私自身は当初、麻酔科や救急科、マイナーに進むことを考えていましたが、そうなれば主人の勤務先と一致することはまずないだろうと思い、同じ道を選ぶことにしました。

プライマリ・ケアに熱い思いを抱いて入職した同期ばかりの中で、わたしは異色といいますか、家庭医療の「か」の字も知らない状態からのスタートでした。ですが、日々診療に臨むうちに、患者中心の医療であったり、家族や地域をみるという視点だったり、さまざまな角度からアプローチするプライマリ・ケアの奥深さ、面白さに引き込まれていきました。

現在私は主人とともに、北海道社会事業協会帯広病院(以下、協会病院)でもうすぐ3歳になる息子を育てながら後期研修を続けています。子どもが生まれたときに産休・育休で1年間お休みをいただき、2年前に職場復帰しました。復帰1年目は更別村の診療所での勤務でしたが、上長と相談のうえ、週2日間は午前のみ、週3日間は午後出勤という時短勤務にしてもらいました。

復帰2年目の今年度はフルタイム勤務に戻し、院内提携の保育施設に子どもを預けながら総合診療科で働いています。子どもが急に熱を出すこともありますが、センターの理解もあり、ほかの先生がカバーしてくださるので本当に助かっています。更別時代もそうでしたが、協会病院には同じように子育てをされながら勤務している指導医の先生がいて、困ったときにはいろいろ相談相手になってくださり、心強い限りです。

一番の課題は、やはりタイムマネジメントですね。限られた時間の中で、いかに業務を終わらせられるか。ムダをなくし、効率よく仕事をするよう努めてはいますが、うまくいくこともあれば、そうはいかないこともあって、正直、毎日バタバタしています。

子育てしながら、医師として生きる。

一番苦労したのは復帰直後でした。産休・育休中はまったく仕事から離れていたので、久々の現場では患者さんとのコミュニケーションの取り方や事務作業一つにも、勘を取り戻すのに思ったよりも時間がかかりました。

反対に子育てを経験して良かったと思うのは、子どもを連れて来院するお母さん・お父さんの気持ちに身をもって共感できるようになったことでしょう。子育て中は何に困るのか、どんなことに不安や焦りを感じるのか。そういったことも踏まえて、安心を与えられるような診療を心がけています。

出産をするまでは朝から晩までバリバリ働くのが医者だと思っていました。診療後も事務作業をしたり、勉強したり。すべての時間を仕事に捧げる、それが医師の働き方だと思っていました。

でも、出産をして、仕事だけに自分の時間を費やすことができなくなり、ステレオタイプの医師だけがすべてではないと気づきました。子育てをしながら、どう医師として地域社会に貢献していくか。時間の使い方を含めて自分なりの医師像を模索している最中です。

この春(2020年4月)から本輪西ファミリークリニックへ異動となり、都市部での診療所研修に入ります。勤務体系はもう一つギアを上げて、主人にバックアップしてもらいながら夜間と休日の当番勤務もする予定です。これからも専門医取得をめざしながら、育児と仕事の両立にチャレンジしていければと思います。

※ 勤務先・学年は全て取材当時のものです(2020年)

PA GE TOP