インタビュー

鳥山 敬祐

栄町ファミリークリニック 医師
家庭医療・総合診療再研修コース

2011年九州大学医学部卒業。神経内科専門医として病院勤務後、外資系コンサルティング会社を経て2021年9月入職。認定内科医、神経内科専門医

コンサルの経験を医療界に還元したい。

こちらに来る前は、外資系コンサルティングファームに1年半ほど在籍していました。

大学を卒業後、神経内科の専門医として働いてきましたが、思うところあり、一度医療から離れてヘルスケア領域全般を俯瞰してみたくなったんです。

コンサルタントファームでは、主にヘルスケア関連企業の中期経営計画策定に携わったり、製品の販売戦略を練るといった経営のサポートを行いました。その後コンサルで身につけた技術、知識、視点をより現場に近い場で活用し医療に還元したいと思うようになり、臨床の現場に戻ることにしました。

臨床に戻るにあたって神経内科ではなく、家庭医を選んだ理由としては、家庭医の多面性に魅力を感じたことです。診療科を横断してトータルで患者さんを診ることであったり、医療の枠組みを越えて社会サービスを活用しながら問題解決を図ることであったり。家庭医の言葉でいえば「包括性」ということになるのでしょうか。

北海道家庭医療学センターは以前から名前を聞いて知っていました。ホームページに「再研修コース」を明確に掲げていたことも応募のきっかけになりました。見学で訪れた際に、更別村国民健康保険診療所の山田康介先生が地域で理想的な家庭医療を実践されているのを目の当たりにし、栄町ファミリークリニックの中川貴史先生からお話を伺う中で、チームビルディングや経営に対する洞察力に感銘を受け、「ここで学ぼう」と心が決まりました。外部から入って活躍している草島先生の存在も心強かったですね。

患者さん一人ひとりのコンサルタントに。

入職してまだ日は浅いですが、家庭医の面白さを日々実感しています。

診療一つとっても、家庭医は徹底的にやります。患者さんとの会話の中に潜んでいるちょっとした情報を絶対に見逃しません。診察の中で気になった発言があれば、振り返りの場で「○○さんはなぜこう発言をしたのか?」を1時間ぐらいみんなで議論するんです。疾患だけではなく、感情面にも深く共有していく。そこが家庭医のプロフェッショナリズムだし、自分はこういう医療をやりたかったんだと改めて感じています。

教育環境も非常に充実しています。先ほども触れましたが夕方のカンファレンスでは院長を含むメンバー全員で徹底的に議論が行われますし、診療前の朝の時間は専攻医の学習時間に充てられています。私も参加させてもらっていますが、とても勉強になります。オンラインの勉強会も頻繁に行われ、数多くの若い専攻医の先生方から刺激をもらっています。

得る部分とは逆に私自身の経験が組織に還元できる部分もあります。神経内科の疾患を診察する場合はもちろんですが、コンサルで培ったものの考え方やプロジェクトの組み立て方は患者さんとの関わりの中でも活用できるので、専攻医の先生にどんどん伝えていけたらと思っています。

私自身のこれからの目標としては、草島先生と同様、まずはプライマリ・ケア認定医の取得を目指し、その後はフェローシッププログラムに進みたいと考えています。構図としては草島先生と同じですが、そこからは別の「味」を出していきたいですね。私はマネジメントや経営の面で法人の成長に貢献できるような立場になることが目標です。

家庭医の仕事は、ある意味で患者さんにとってのコンサルだと考えています。何でも気軽に相談に乗り、必要があれば別の専門医や社会インフラにつなぐ。いわばハブの役割です。民間企業の目的が利益の追求でコンサルがそれを助ける仕事だとすれば、私たち医師の使命は患者さん一人ひとりの「人生をより良くする」ことに尽きます。必ずしも病気を治すことが目的ではなかったり、場合によっては治療とは違う選択を行う場合もある。トータルで診るのが家庭医なんだと、いま改めて思います。

国の方針として地域包括ケアシステムの構築が推し進められる中で、家庭医の需要は今後ますます高まるでしょう。私たちが携わっている訪問診療は確実に伸びていきます。家庭医療のビジネスチャンスは大いにあります。ビジネスに興味のある医師にとっても、絶対におすすめの領域です。

※勤務先・学年は全て取材当時のものです(2021年)

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