専門研修コース
家庭医療学専門医コース/総合診療専門医コース

専門研修プログラム3つの魅力

日本専門医機構総合診療専門医制度・日本プライマリ・ケア連合学会に認定された4年制プログラムです。全国各地に家庭医を輩出し続けてきた歴史ある家庭医育成プログラムを引き継いでいます。指導医層の厚みや多様なサイト展開を活かし、多くの教育コンテンツと一人ひとりの専攻医が安心して学べる研修環境を提供します。研修修了時の目標として、環境に合わせて自分自身で成長し続けられる「自立した省察的実践家としての家庭医」を掲げ、日々の振り返りから学びを深めることを大切にしています。日本プライマリ・ケア連合学会 の新・家庭医療専門研修プログラムの研修も並行して行うことで、国際標準の家庭医/総合診療専門医として活躍していくことを目指します。

専門研修プログラム 運営担当責任者メッセージ/山田康介 医師/宮地純一郎 医師
専門研修プログラム 指導医メッセージ/中川貴史 医師/今江章宏 医師/堂坂瑛子 医師
1 | 多様かつ一貫した熱い教育プログラム
2 | とびきり充実した教育コンテンツ
3 | チャレンジを後押しする支援の輪
4 | 私たちが働くまち
応募から選考試験までの流れ

専門研修プログラム 運営担当責任者メッセージ

参加メンバー

  • 山田康介
    医療法人北海道家庭医療学センター副理事長、更別村国民健康保険診療所 所長

  • 宮地純一郎
    医療法人北海道家庭医療学センター教育・学習支援センター センター長、浅井東診療所 副所長

 

『 専門研修コースで何を培うのか? 』

1.患者という〈レンズ〉を通して社会を見る。

宮 地

今日は山田先生とともに北海道家庭医療学センター(以下、HCFM)の教育、特に専門研修コースについてお話ができればと思います。本題に入る前に、読んでくださる方のために、教育におけるそれぞれの立ち位置を整理できればと思います。

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2021年4月、HCFM内に「教育・学習支援センター」が立ち上がり、私はそのセンター長を拝命しました。詳しくは[ 以前のインタビュー ]で話していますので、ここでは簡単に触れる程度にしますが、「教育・学習支援センター」は、これまで「専攻医の育成」、「フェローの育成」、それ以外の方のための「組織学習」の3つに分けて行ってきた教育を束ねて、教育全体を大きな絵で描き直すことがミッションです。そうした中で私の役割は、直接専攻医を指導するというのではなく、HCFMの教育の大きな方向付けや仕組みづくりを行うポジションと考えてもらえたらよいかと思います。

山 田

私の役割は3つぐらいあるでしょうか。1つ目は医療法人北海道家庭医療学センターの経営本部の人間として、法人の経営方針と「教育・学習支援センター」が進もうとする方向の調整役。2つ目はHCFMの教育プログラムの土台を作ってきた一人として、現在専門研修コースのリーダーを務める堂坂先生(寿都診療所)を後方支援する役割。3つ目はプログラム責任者という肩書きで、学会や日本専門医機構などとの対外的な折衝を行う役割です。

宮 地

山田先生は指導医として、日々専攻医と接していらっしゃるので、その視点でもお話をいただけたらと思います。

山 田

そうですね。

宮 地

攻医の研修期間というのは、家庭医としての専門的な技術を習得する期間ではありますが、同時に社会を知る期間でもあります。もっと言えば、診療のための技術を身につけること以上に、家庭医はヘルスケアにまつわる人々の暮らしや社会の制度がどうなっているのかを自分なりにとらえ、分析することが重要だと思っています。

そのためには大中小の3つを〈みる〉時間が必要です。

小さなレベルとしては、診療を通じて一人の患者さんを診る時間。治療をしたり、あるいは治療ができない疾患を生活の中でどう見ていくかを経験します。中ぐらいのレベルは、家族を見る時間です。家族といっても、血縁関係もあれば、血縁関係がなくても一緒に住んでいるとか、関係性が強いとか、現代社会では家族のあり方そのものも広がってきています。診療は、そうした社会の変化そのものを家族という単位を使って見る機会でもあります。大きなレベルというのは、たとえば村全体、コミュニティ全体といったように、人の大きな集まりを見る時間です。人間は大きな集まりをなんとなくとらえることができないので、一人の患者さんというレンズを通して村を見て、医療職の強みやまちの仕組みを知ります。
いうなれば患者さんは診る〈対象〉であると同時に、患者さんを通してその向こう側を見る〈レンズ〉でもあります。専門研修の間は、いろいろな〈レンズ〉が患者さんとして目の前に現れてくるので、それを通して社会を知るわけです。ただ、そういう〈ものの見方〉はひとりでに培われるものではありません。そこで現場の指導医との振り返りが重要になってくるんですね。

振り返りのイメージは経験したことがない人には伝わりにくいですが、外科の世界における〈前立ち〉の役割に例えられると思います。手術の際に第一助手として、執刀医の視野を確保するために介助する存在です。鈎の引き方によって術野の見え方がまったく変わるので非常に重要なポジションです。術野がきれいに見えるかどうかは〈前立ち〉にかかっています。未熟な執刀医の場合は指導医の立場にある人が〈前立ち〉を務めます。家庭医の振り返りにおける指導医の役割は、まさに〈前立ち〉に近いと私は考えています。

たとえば患者さんは83歳の男性。10個ぐらいの疾患を抱えている。奥さんは認知症。家族間に不和がある。集落の中でいろいろないざこざがあり、孤立している。貧困状態である。こうなってくると要素が多すぎて、何を見たらいいのか、どこから手を付けたらいいのかわかりません。そこで指導医が鈎を引く代わりにいろいろな問いかけを行います。この事例のどこに着目したらいいのか、次に何をしたらもっと見えるようになるのか。

振り返りとは、自分がどう思うかを深く掘り下げる側面もありますが、執刀医と前立ちのように共通の事例に向き合いながら、どう切り開くのかを考える作業なのだと思います。10年程前までは医学教育の中で振り返りは研修医が一人で考えるものという捉え方がありました。ですが、本質的には人と人との対話や相互作用であるという考え方がだんだん浸透してきて、相手がいてはじめて成立するという考え方に現在はシフトしています(※1)。


2.再帰性と振り返り。感情的な揺らぎに向き合う。

山 田

専門研修コースは4年間の中で設定された研修目標の達成を目指すわけですが、それを通じて社会人としての医師であったり、人格面での成長も後押ししていきます。HCFMの教育は後者の部分が大きいからこそ、修了生たちは卒後それぞれの現場で、価値ある存在として活躍できているのだろうと自負しています。では、4年間で何を経験し、どう人格面での成長に結びつくのか?それは、診療を通して自己に向き合うからじゃないかと考えています。

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多くの医師は、医学部に入りごく限られた人々に囲まれて学びます。自分自身を振り返ってみても、中学時代までは公立のごちゃまぜの環境で育ちましたが、高校、大学へと進むうちに、周りの人間は狭まるように限られていって、それ以外の社会を知ることも少なく、思春期の重要な時期を過ごしたように思います。そうして大学を卒業し、臨床研修、専門研修に入りますが、家庭医の専門研修の現場に来ると、もしかするとこれまでの人生で交わることのなかったような人たちであったり、さまざまな職業、考え方、背景を持つ人たちと関わることになります。

そのとき専攻医である「あなた」は相手に今までにない感情を抱いてしまうかもしれません。心の揺らぎ、困難感、無力感。そうしたネガティブな感情に苛まれるかもしれません。でもそれは、ある意味で仕方のないことといえるでしょう。

医者も人間ですから、感情が揺れ動くのは当然です。だけど気をつけなければならないのは、それにフタをしないことです。指導医である私たちに、そういう感情を包み隠さずぶつけることがとても大事なんです。同じ経験をした先輩として、感情の揺らぎと対峙する方法を知る指導者として、私たちはそれをしっかりと受け止めます。専攻医はそうした経験を踏まえて、プロの家庭医としてあるべき態度であったり、寛容さを身につけていきます。患者さんだけではありません。一緒に働く看護師や事務スタッフとの衝突も経験するはずです。ときとして医師としての傲慢さが顔を出すかもしれない。でも、そうじゃないんだということを逃げずに学ぶことにより、社会人としての成長につながると考えています。

宮 地

とても大事な話です。先ほど「患者を通して社会を見る」という話をしましたが、見るためには〈ものさし〉が要ります。最初に手にしている〈ものさし〉は自分自身でしょう。自分の家族、自分が生まれ育った社会、それらとの比較の中で患者さんや社会を見る。だから同じ出来事でも、見る人によって湧き起こる感情や反応は異なります。患者さんを通して社会を見るとは、自分が生まれてきた社会の影響を目の前の患者さん・家族・地域の中に見る、自分自身を見ることにほかなりません。社会学者や人類学者がフィールドワークでコミュニティを調査するときにも同じようなことが起こるといわれています。その影響をきちんと確認しながら分析をする能力は家庭医の振り返りにおいても重要だと思います。振り返りはともすると、自分の思考や感情だけを見る作業だと思われている節がありますが、実際にはそれだけではないと思います。山田先生の話にあったように、臨床の現場で「患者さんを通して社会を見る」にあたって自分自身の生まれ育った社会や家庭の影響を確認していくことでもあると思います。

こうした話になった時に、自分の主観や感情を排除して、第三者的に振る舞うようになればよいという誤解がよくあります。しかし、社会の側がどんな姿を見せてくるのかはこちらの立場に影響を受ける、そういう前提のもとで社会を見ていることを、私たちは忘れてはいけません。医者はその立場の性質上、常に周りの人に影響を与えながら存在しており、患者・家族・地域は医者向けの姿を見せてきますので、当事者でいることはあっても、第三者の立場に立てることはあり得ませんし、医師として知ることができる社会の姿には限度があります。そういった限界を人式して、患者が経験している社会の姿は自分から見えるものと異なることに気づける能力のことを再帰性(reflexivity)と呼びます。この言葉は振り返り(reflection)と似ていますが、振り返りが自分の内面や過去の経験を考えるのに対して、再帰性は自分の立場の外側にある他者から見える社会を検証する点が異なります(※2)。我々のプログラムでもここまで明確に名前をつけてこの二つを区別してきませんでしたが、この振り返り(reflection)と再帰性(reflexivity)の両方を培うことが、患者を通して社会を見る力が培われていき、家庭医としての成長につながると思いますし、これからは大切だと思います。

そうした中で、先ほどのように、診療の現場で自分とは相容れない人と出会うこともあるでしょう。そこで感情が揺らいだとしても、医療者として責任を持ってその人をケアするのは医師としての務め。家庭医はコミュニティをまるごと見る立場にあります。多様な価値観、多様な立場の人が、一つの社会で生きられるように支援することを包摂性(inclusiveness)と呼ぶことがありますが、これも「患者を通して社会を見る」ことを鍛錬する医師が目指すと良い、とても大事な力です。

山 田

私たちHCFMが、ありがたいことにいまもなおトップランナーと評価していただける要因の一つは、家庭医としての知識やスキルを磨くのと同時に、宮地先生がいうような力を養うことのできる研修プログラムだからでしょう。これまであまり言語化されることはなかったけれども、おそらくこれは、私たちの研修プログラムが持っているhiddenなカリキュラムといえます。文化といってもいい。ときに目を覆いたくなる複雑な問題に対して、逃げずに、丁寧に取り扱い続けているというのは、HCFMの教育の大きな特徴といえるかもしれません。


3.指導医自ら鎧を脱ぎ捨てる、丸裸の指導。

宮 地

医療は、貧困や偏見、価値観の相違などの結果、生きづらくなっている人たちが身を寄せることの多い場所です。それに対して医療としての〈うつわ〉を用意できるかどうか。それが社会の豊かさとか、厚みみたいなものにつながっていきます。医師はその一端を担うことになるわけですが、家庭医の育成に際して、山田先生は現場でどう専攻医と向き合っているのか、どう鈎を引いているのか、教えてください。

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山 田

そうですね。いろいろありますが、まずは自分自身を一つのロールモデルとして見せることでしょうか。完全無欠のロールモデルではなく、人間くさいロールモデルとして、専攻医にはいろいろな面を見せるようにしています。いわば自己開示です。たとえば難しい患者さんに出会ったときに腹が立ったとしたら、振り返りの場でそれを包み隠さずしゃべります。しゃべることで私自身がガス抜きされて元気になっていく姿も見せます。そうやって「指導医ですらそういう感情を持つんだ、持っていいんだ」という暗黙のメッセージを発するんですね。ただ、同時にそれを脇に置いてその方のケアを全うします。そこまで自分を見せないことには、専攻医の中に態度の変化は生まれません。

宮 地

けっこう丸裸の指導ですよね。たしかに指導医側が鎧をガッチリ身にまとっていてはうまくいかないフェーズがあるのは事実です。常に丸裸である必要はありませんが、振り返りの場で必要に応じて鎧を取り外し、自分の経験を話したり、感情を開示する。指導医の立場に立つと完璧を装ってしまいがちですが、いつも完璧なわけではなくて、つまずいたり、うまくいかないこともあったりしながら乗り越えている姿を見せることが大事なんですね。HCFMのプログラムも外側から見ると、老舗で、できあがったプログラムみたいに映っているきらいがありますが、でも現実はけっこう泥臭かったり、丸裸の指導みたいな側面があります。私としてはそこの部分をもうちょっと崩せていけたらいいのかなと思っています。

山 田

たしかに、うちの研修プログラムはそう見られがちです。でも実際には発展途上の部分があって、そこを専攻医のみんなとぶつかりあいながらカイゼンしているんですね。逆にいえば、プログラムとしてまだまだ完成じゃないし、もっといいものにできる余地があります。学習者と指導者が一緒に磨き上げるプログラム、それがいいのかなと思います。

宮 地

そのためにhiddenな部分をもう少し見えやすくする努力も必要ですし、逆に言葉にするのは最後まで難しいところを無理に言葉にしようとしすぎずに扱うというのはこれからも続く挑戦なのかもしれません。山田先生、本日はありがとうございました。

山 田

こちらこそ、ありがとうございました。

参考文献

※1:この点についてより知りたい方は以下をご参照ください。
Eva, K. W., & Regehr, G.(2008). “I'll never play professional football” and other fallacies of self‐assessment. Journal of Continuing Education in the Health Professions, 28(1), 14-19.

※2:医療者の教育におけるReflectionとReflexivityについての類似点と相違点についてより知りたい方は以下をご覧下さい。
Ng, S. L., Wright, S. R., & Kuper, A.(2019). The divergence and convergence of critical reflection and critical reflexivity: implications for health professions education. Academic Medicine, 94(8), 1122-1128.

専門研修プログラム 指導医メッセージ

参加メンバー

  • 中川貴史
    医療法人北海道家庭医療学センター常務理事、栄町ファミリークリニック 院長

  • 今江章宏
    医療法人北海道家庭医療学センター医師キャリア支援・広報センター センター長、寿都町立寿都診療所 所長

  • 堂坂瑛子
    寿都町立寿都診療所 副所長

 

1.総合診療医になるには何科へ行けばいいですか?

中 川

総合診療科が19番目の基本領域に位置づけられて以降、家庭医・総合診療医に対する認知度は格段に上がりました。北海道家庭医療学センターの各拠点にも毎年多くの研修医や大学生の皆さんが研修・見学に訪れています。

家庭医に興味がある人たちといえば、その昔はかなりマニアックで、そのぶんマッチョというか、[家庭医大本命]で学びに来る人が多かったわけですが、その頃に比べるとうちに来る方も、[家庭医一直線タイプ]から[他科も気になる人たち]まで、かなり幅が広がっているように思います。

そうした中で感じるのは、家庭医・総合診療医の実情が十分に伝わっていないもどかしさです。「総合診療は食えますか?」「この道に進んでも大丈夫ですよね?」、そんな声さえ聞こえてきます。

そこで本日は、寿都診療所で実際に専攻医の指導に当たりながら、研修医や大学生の研修・見学の受け入れを行っている今江先生と堂坂先生に加わってもらい、このあたりの話ができればと思います。

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堂 坂

今日はみんな寿都にゆかりのあるメンバーですね。私は今江先生の教え子で、今江先生は中川先生の教え子だから、3世代トークになりますね。中川先生はおじいちゃん!

中 川

やめてよー、年寄り扱いは。

堂 坂

冗談はさておき。見学に来てくれた方に話を聞くと、「将来的にどういう働き方をしたいのか」がイメージできていない人が多いと感じています。「総合診療医」という名前ばかりが一人歩きして、具体的な働き方のイメージまではできていない。たとえば他科なら身近にそのクリニックがあり、ロールモデルがいるからイメージしやすい。

でも、総合診療医はまだ数が少なく近場にいないから、特に医学生はイメージがしづらいと思うんです。最近聞かれて戸惑ったのは、「先生みたいに地域で働くには、最初は何科に進んだらいいですか?」という質問でした。

中 川

それで、なんて答えたの?

堂 坂

「いま総合診療をやりたいのに、なぜほかの科へ進もうとするの?」って。

今 江

質問の意図はわかります。周囲を見渡したときに、他科で経験を積んでから開業した方が多いからでしょう。まずは何か専門医を取得し、その後にセカンドキャリアとして総合診療に進むパターンです。僕たちみたいに最初から家庭医を志して専門的に学んだロールモデルが身近にいないんでしょうね。

中 川

なるほど。でも、僕たちとしては最初から総合診療・家庭医療を学ぶことを勧めたいですね。

総合診療の[知識][技能]を身につけることはもちろん、「どんな患者さんが来ても舌打ちしない」医師になるための[態度]領域を早い段階で経験することが大切だから。一人でできないことはもちろん山ほどあるけれど、適切に他科へつなぐ技術があれば、なにも恐れることはありません。その質問にある地域で働きたい、総合診療医として働きたいと考えるなら、まっすぐ総合診療医・家庭医の道を突き進むべきだよね。


2.総合診療医は田舎で一人ぼっち?

堂 坂

不安といえば、学生さんから聞かれたことがあるんです。「将来は地元に帰りたいけれど、一人で地域に乗り込む勇気がない」って。

中 川

なるほど。田舎の医師は一人で診療所を守っているイメージがあるんだろうね。総合診療医=ソロ・プラクティスみたいに。もっといえば、都市部の開業医にもソロ・プラクティスのイメージがある。

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でも、北海道家庭医療学センターは寿都診療所のような人口3000人の診療所も、栄町ファミリークリニックのような札幌の診療所もグループ・プラクティスを基本にしていて、一人ではなく仲間と一緒に、一人ひとりの患者さんや地域の健康課題に向き合っている。これはうちの法人に限ったことではなく、総合診療医・家庭医の領域ではグループ・プラクティスが推進されているし、国の制度そのものがソロ・プラクティスからグループ・プラクティスへの流れになっています。

堂 坂

もしかすると、田舎に赴任したら十分な教育を受けられないという心配があるのかも。

今 江

実際にはむしろ逆ですよね。寿都の場合は専攻医一人に対してほぼマンツーマンで指導医がつく。

大きな病院ではこうはいきません。実際、地域医療研修を体験した研修医は「こんなに濃厚で充実した教育が行われているんだ」と驚きます。グループ診療と教育が結びついているのは、北海道家庭医療学センターの強みかもしれません。

ところで不安といえば、総合診療医不要論というのを噂レベルでどこかで耳にした人もいるかもしれません。いざ臨床現場に出てみれば、総合診療医がいる病院も徐々に増えていますし、当たり前に各専門医と総合診療医・家庭医が連携して患者さんを診ているんですけどね。

中 川

特に学生の場合は周りに総合診療医がいないからね。あいかわらず天然記念物的な位置づけでみられているのかな。僕ら家庭医・総合診療医はどんな荒野でも、種を落とし、根を張り、花を咲かせることができると自負しています。いろいろな領域を勉強し、ときに困難な患者さんと向き合う中で、地域で起こるさまざまな課題を瞬時に見出し、しかるべき仲間を呼び込んでチームを形成し、適切な形で柔軟に医療を提供することができる。その最たる例が新型コロナウイルス対応です。

コロナ禍にあって北海道家庭医療学センターは決して感染症の専門組織ではないにもかかわらず、郡部・都市部の診療所、病院、施設など、さまざまな局面で臨機応変に対応してきました。行政との連携や保健所との折衝もスムーズに行えたのは、普段から診療所外での多職種連携に慣れている家庭医だからです。家庭医の柔軟性やしなやかさは、制度や社会状況が大きく変わるときこそ強みを発揮するんだと実感しました。

もっというと、僕ら家庭医はステムセル(幹細胞)みたいなもので、将来的にさまざまなはたらきを持った細胞に分化する可能性を秘めています。郡部の診療所で地域の医療をまるごとみるのか、都市部診療所で多様なステークホルダーとともに地域包括ケアを実践するのか、あるいは急性期病院の総合診療科で他科とのハブの役割を担うのか。総合診療を学んだ先に多様な働き方があるというのは、皆さんにぜひ知ってほしいことの一つです。

堂 坂

その点でいえば北海道家庭医療学センターは、子どもが小さい間は自然豊かな郡部で働きたいとか、少し大きくなったら進学を考えて都市部に住みたいとか、自分自身や家族のライフサイクルに合わせて勤務地を相談できるというのはありがたいですよね。

今 江

それができるのも郡部と都市部にさまざまなセッティングの拠点があるから。これは組織としての強みだと思います。

中 川

「親のロマンは子の不満」では、診療の質も、教育の質も上がらないからね。


3.全部診る総合診療医は勉強が大変ですよね!?

今 江

うちに研修に来た人たちから最近よく聞くのは、「一つの専門領域でも大変なのに、すべての領域について勉強し続けるのは無理なんじゃないか……」といった声です。

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中 川

その気持ちもよくわかる。ただ、現時点の力では無理だと思ったとしても、研修や見学のときにこの領域が楽しいと思えたら、その時点で[通行手形は手にしている]と思うんだよね

今 江

冒頭の堂坂先生の話にも通じますが、「自分が何をやりたいのか」、それに沿った選択をすることが一番です。私たちを含め先輩医師は自分自身が歩んできたキャリアを正当化して後輩に勧めがちだけど、最終的には自分自身が「楽しいか、楽しくないのか」「やりたいのか、やりたくないのか」を大事にした方がいい。どの科に進んでも、勉強をし続けるのは同じですからね。こういうのって結局、◯◯科と比べるのではなく、僕たち自身がいかに楽しんでいるのかを知ってもらうことがいいと思うんです。

堂 坂

毎年、北大で講義をするときに、自己紹介として「なぜ総合診療に進んだのか、いまの仕事の何が楽しいのか」を話すんですが、そこに食いついてくれる子が多いんです。それは、他科に進む人にとっても関心があるみたいで。現役で働く医師が、なぜその領域を選択したのか、いまどんなやりがいを持って仕事に臨んでいるのかを聞いて、進路の参考にするという声をよくもらいます。

中 川

そうだね。自分がどんな思いで仕事に向き合っているのかを、学生さんにはどんどん伝えていってほしいな。

今 江

家庭医という名前が表すように、人生や家族のあらゆる段階において自分自身の経験が診療に生きるのは家庭医ならではですよね。たとえば自分が子育てを経験すれば、熱が出た子どもを診療所に連れてきた親の不安が痛いほどわかる。親の介護を経験すれば、そこで出てくる困りごとに気づくことができる。子育て、介護、すべての人生経験が医師としての糧になる。

中 川

医師としての成長だけじゃなく、患者さんを通して人間としても成長できるんだよね。あぁ、凜とした佇まいの患者さんだな。きれいな心を持った方だな。こんな家族もいるんだなぁ。そういった出会いの中で、自分自身に置き換えて吸収したり、あるいは反面教師にしたり。診療の水面下で人間学を学んでいる気がします。それをぜひ実感してほしい。堂坂先生はどう?

堂 坂

診療以外にも、いろんなことができるのが楽しいですね。地域の学校で授業をしたり、健康診断で子どもたちとふれあったり、産業医として企業と関わったり。家庭医は診療所の外の世界ともつながっているから、ずっと勉強していられる。それも魅力なんだと思います。

中 川

そうそう、何でもやりたいことを広げられるのがこの領域です。一人ひとりの患者さんに向き合う一方で、マスに働きかけることもできる。

たとえば栄町ファミリークリニックがすすきので、コロナワクチン接種に協力したのもその一つだけど、そういった公衆衛生の領域に関与していくことだって僕らにとっては普通であって、仕事の一部になりうるんです。少しでも地域を良くしようという気持ちがあれば、一人ではできなくてもみんなが知識を持ち寄ることで形にしていくことができる。終わりのない仕事です。

大事なのは、僕ら自身がイキイキと仕事をすることじゃないかな。そういうのは語らずともほとばしるものだから。それを見学に来たときに感じ取ってもらって、それを楽しいと思うなら、間違いなく良い総合診療医・家庭医になれると思います。

みんなに総合診療医・家庭医の魅力を語ってもらったところで、今回のトークを締めます。今日はありがとうございました。

1 | 多様かつ一貫した熱い教育プログラム

HCFMのプログラムでは病棟、都市部診療所、郡部診療所と3種類の研修先を通じて家庭医の基礎を学びまず。全ての研修施設でHCFM医師による指導を担保し、指導医陣が頻繁に情報共有や議論を行うことで、専攻医一人ひとりの成長が一貫して熱くサポートされる体制になっています。

病棟研修

救急・病棟における実践の基礎やcommon diseaseの管理、臨床推論の土台を取得します。仲間や指導医と共に議論しながら成長しあえる「ホーム」のような環境です。

定期的に「ハーフ・デイ・バック」という枠組みで診療所における基礎研修も行っており、病棟と診療所の実践を比較させながら家庭医としての基礎をかためることができます。その他、個別ニーズに柔軟に対応できる「選択研修」の期間も用意されます。

研修施設

郡部診療所研修

各自治体と提携した有床診療所で1年間の研修を行います。顔の見える多職種連携が実践できるほか、外来・救急の件数が多く、common diseaseの入院管理も行うため、郡部ならではの幅広い学びが得られます。

研修施設

都市部診療所研修

都市部の無床診療所で1年間の研修を行います。外来診療では家庭医療の基礎に照らしながら、一例一例深める実践を行います。訪問診療では件数が多いため、多様な経験を通じて柔軟な実践力が身につきます。

研修施設

専門研修コース4年間のローテート例

2 | とびきり充実した教育コンテンツ

HCFMでは専攻医や指導医層の厚みを活用し、多面的な学びの機会を充実させています。各教育コンテンツを通じて振り返りと言語化を積み重ねることで、自らの経験を糧に日々着実に成長していきます。

on-the-job training 各研修施設で学ぶ

  • 振り返り
    1か月ごとのサイト指導医と専攻医の間で月単位の振り返りと半年経過した際の中間振り返り、1年間の最終振り返りを行っております。
    研修目標ごとの自己評価を行い、指導医と共に形成的評価実施。
    その後の学びをさらに深める方法を探っていきます。
  • CBD:Case-Based Discussion
    症例基盤型ディスカッション
    専攻医または指導医が最近診察した患者の診療録を1名選び、診療内容についてディスカッションを行う。

  • SEA:Significant Event Analysis
    医療ミスやスタッフとの衝突など、専攻医自身が感情を揺さぶられた経験をもとに、感情の共有や家庭医としての成長のきっかけを指導医とともに探索する。

  • Video Review
    医療面接の様子をカメラで撮影し、診察終了後に指導医とともにチェックし面接内容に関してディスカッションを行う。

  • FMカンファレンス:Family Medicineカンファレンス
    専攻医が診療に苦慮した事例を1例選び、専攻医の疑問点や苦慮したポイントに関してディスカッションを行う。
    指導医がファシリテートしながら家庭医としての学びを抽出する。


on-line 自宅か職場から学ぶ

  • on line FaMReF
    ※FaMReF:Family Medicine Resident Forum
    指導医が家庭医療の概念や実践についてのレクチャーを行う。

  • EBMの学び
    専攻医のEBMの学びを深めるため、実際の診療で判断に苦慮した症例に関する論文を選択し、批判的吟味を行う。

  • 臨床力向上カンファレンス
    専攻医同士で行っている疾患あるいは症候別の勉強会。
    専攻医が持ち回りでcommon diseaseや興味のある分野についてレクチャーを行い、その後のディスカッションを通じて臨床上感じる疑問やclinical pearlの共有を行う。


on-site みんなで集まって学ぶ

  • on site FaMReF
    全専攻医が1か所に集合。家庭医としての学びを各専攻医が発表し、相互にフィードバックを行う。指導医はアドバイザーとして家庭医の学びのポイントを抽出する。

  • ポートフォリオ発表会
    年1回全専攻医が1ヶ所に集合。作成したポートフォリオを各専攻医が発表し、相互にフィードバックを行う。

  • ごちゃまぜ勉強会
    HCFMに関わる多職種が一同に会し実際の症例をテーマにしたグループディスカッションを行う。自分と違う職種から得られる新たな視点に刺激を受け、普段会うことのない他サイト職員との交流を深める。

3 | チャレンジを後押しする支援の輪

専攻医がそれぞれの目標へ向かって思い切りチャレンジできるよう、様々な支援を用意しています。結婚や子育てといった専攻医のライフサイクルから個別の研修内容、研修修了後のキャリアまで幅広く相談も行えます。専攻医の自主性も尊重されており、専攻医チーフを通して法人運営や研修環境、プログラムの改善に携わる事もできます。

A|メンタリング

ポートフォリオの作成支援・研修修了後のキャリアなど、さまざまな相談が可能です。

B|研修施設の上級生

上級生との食事会や交流会も頻繁に開催され、気軽に相談できる環境が整っています。

C|事務局

研修に専念できるよう、事務局も一体となってプログラム運営をサポートしています。

D|学び合い

同期や先輩後輩と切磋琢磨しながらの学び合いは長いキャリアの宝になります。

私たちが働くまち

自慢の観光地、一押しスポットなど医師の視点で働く〝まち〟を紹介。
住環境からスタッフのヒルメシ、推し本まで様々な情報を掲載しています。

応募から選考試験までの流れ

総合診療専門研修を希望される方は日本専門医機構の専攻医登録システムで事前登録を行う必要があります。

募集要項

募集対象

2023年3月以前に初期臨床研修を修了する方

募集人数

12名

研修期間

4年間

身分

北海道家庭医療学センター 正職員

待遇

当法人規定に準じて給与および福利厚生を支給
(詳細はお問い合わせください)

選考方法

1.願書(指定様式)提出
2.各種応募書類提出(詳細は願書受理後に事務局よりメールでご案内いたします)
3.採用面接

選考日程

2022年10月8日(土)札幌(予定)
※上記日程や現地での参加が難しい場合は、オンラインでの実施も可能ですのでご相談ください


必要書類の郵送・お問い合せ先

北海道家庭医療学センター事務局
〒007-0841 北海道札幌市東区北41条東15丁目1-18
TEL. 011-374-1780 FAX. 011-374-6265
E-mail:info@hcfm.jp


見学・実習のお申し込み

関心のある方は、まず北海道に見学に来て、診療と研修の実際をご自分の目で確認していただければと思います。北海道の地より、皆様の応募を心よりお待ちしております。

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