COVID-19と家庭医

中川 貴史

栄町ファミリークリニック 院長



「システムの最適化」

僕らは決して感染症の専門医ではありません。でも、今回のような非常時こそ家庭医の出番だと感じる場面が少なからずありました。
たとえば千歳市のある高齢者向け住宅でクラスターが発生し、HCFMのメンバーで診療面のサポートをしたケースでは、時間がないからと闇雲に飛び込むのではなく、僕らは保健所・北海道庁と折衝してJMAT(日本医師会災害医療チーム)の一員に指定してもらった上で現場に入りました。

こうした枠組みに落とし込んだことにより、当時不足していたPPE(個人防護具)の提供を保健所から受けられ、加えて医療従事者が感染した場合の補償も受けられるという安心できる条件のもとで診療を行うことができました。このとき対応に当たったのが向陽台ファミリークリニックの中島徹院長をはじめ、看護師2名、事務局職員各3人からなる6人のチームです。中島医師が現場で患者さんの適切な重症度評価を行い、保健所へ正確な情報を伝えたことで、入院が必要な方を迅速に病院へつなぐことができました。

このような緊急時において、行政機関にアプローチして交渉を重ね、短期間で制度を動かせたのも、やはり家庭医だったからだと自負しています。プライマリ・ケアの基本であるACCCA、そのCのひとつがCoordination(協調性)です。家庭医は患者ケアの調整役を担うだけではなく、もう少しマクロな視点でヘルスケアシステム全体を調整することが求められます。システムを最適化するために必要な人材を仲間に引き入れたり、思いやったり、ときにはシステムを動かす力技が必要な場合もあります。今回の新型コロナウイルスは、こうした家庭医が持つ機能を再認識する機会になったと受け止めています。

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