インタビュー

鈴木 哲

寿都町立寿都診療所
専攻医3年目

札幌医科大学医学部 卒業
勤医協中央病院 初期研修
北海道家庭医療学センター 後期研修
・北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科
・寿都町立寿都診療所 医師

寿都診療所での学び。

後期研修プログラム1年目・2年目は北海道社会事業協会帯広病院(以下、帯広協会病院)で病棟研修を行いました。3年目は郡部診療所研修ということで2019年4月より1年間、ここ寿都診療所で勤務しながら家庭医療を学んでいます。

2年間いた帯広協会病院は急性期の病院で、症状の重い患者さんが多く受診されていました。ですが、寿都診療所は症状の重い・軽いにかかわらずすべての患者さんを診るので、どういう集団にどういう病気があるのかという疫学的な学びも体感できています。

終末期の患者さんにも多く携わりました。その中でお看取りも経験しました。ここは19床のアットホームな診療所で、患者さん一人ひとりの歴史を診療所内のみんなが知っています。患者さんとの心理的な距離が近いために、診療内容そのものは同じであっても死への向き合い方はどうしても協会病院の場合とは異なってきます。人によってはうまく対処できず感情的に入り込み過ぎてしまうのでしょうが、こうしたお看取りの経験を重ねる中で精神的な体力が培われていくのだと、この1年で実感しています。

北海道家庭医療学センターの後期研修の魅力は、まさにこのセッティングの幅の広さだと思うんです。都市部、郡部、病棟などさまざまなサイトがあり、それぞれに家庭医療の専門的なトレーニングを積んだ指導医がいて、十分なフォローを受けながら多様な経験を積むことができます。同期を含め専攻医が多く、お互いに刺激を受けたり、高め合いながら成長できるのもセンターの良いところですね。

たとえ家庭医志望じゃなくても。

実は僕自身は、正直にいうとガチガチの家庭医志望ではないんです。[ 前回のインタビュー ]でも話しましたが、病棟研修を通じて救急医療や集中治療にやりがいを感じていて、将来的には急性期の病棟で家庭医的な視点を持った「病院総合医」になりたいと今は考えています。

その意味でも寿都診療所で見て、聞いて、感じたことは将来生きてくると確信しています。たとえば病院から退院調整で帰っていった患者さんが地域の診療所でどのようなフォローを受けるのか、それを受け入れ側の診療所の立場で経験できました。またそのときに診療所サイドが病院に対してどのような情報を必要としているのかも身をもって知ることができました。おそらくずっと病院で研修を行っていたら気づくことはできなかったであろうさまざまなことが、病院と診療所の両方を経験したことでみえてきました。

寿都での生活は、正直なところ1年という短い時間の中では田舎暮らしを満喫するところまではいきませんでしたが、連休が取れたときには函館やせたな、八雲へ家族で遊びに行くなど、今できることを楽しんでいます。妻は子育て支援センターに顔を出し、地域の方との交流を深めているようです。なによりの魅力はたべものですね。帯広にもおいしいものはたくさんあったけど、寿都はさすがに漁師まちだけあって魚が本当においしいんです。意外だったのは、……なんて言っちゃうとすごく失礼ですが、とてもおいしい中華料理のお店に出合えたことです。特産品の小女子(こうなご)を使ったチャーハンとか、絶品の麻婆豆腐とか、本格的な点心まで味わえるのに、予約しなくても入れちゃうんだからありがたいですよね。


いこい飯店

寿都診療所での研修は3月まで。春からは札幌の栄町ファミリークリニックに移ります。後期研修最後の1年です。都市部における家庭医療をしっかりと学び、理想的な「病診連携」のあり方を自分なりに深めていきたいと考えています。

※ 勤務先・学年は全て取材当時のものです(2020年)

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